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全国遊廓案内の謎

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全国遊廓案内による各遊廓の紹介文は、初めてその地に訪れた遊客がその遊廓で泊まる場合、あらかじめ知っておきたい情報が満載となっております。即ち、

1, その遊廓の場所及び遊廓に至る交通手段、さらに下車後からの距離
2, その遊廓の簡単な歴史
3, 陰店か写真式かの記述
4, 娼妓は居稼ぎか送り込みかの情報
5, 廻し制度の有無
6, 料金とシステム
7, 台の物(客席に出す酒、肴、茶菓子)が上記の料金に含まれるか否か
8, 貸座敷の数と名称及び娼妓の数
9, 娼妓の主な出身地
10, 付近の観光地
11, その他、宴席で歌われる民謡など

といったところですが、本書でこの総てを網羅している遊廓は稀で、大概上の項目の幾つかは欠如しています。この中で優先順序をつけると1,6,8が最優先、場所、規模、料金が一番重要となります。この場所、規模、料金が最優先なのは昭和三十年の『全国女性街ガイド』でも同じで、当然といえば当然といえます。

さて、本書の著者が情報収集の手段として、仮に土地の新聞記者諸氏を利用したとしたなら、一体誰に聞き取りをしたのでしょうか?上記の項目を鑑みれば、考えられるのは(イ)記者自身を含めたその遊廓をよく利用する者、(ロ)その遊廓の貸座敷の主人、(ハ)娼妓の情報を把握できる立場にいた人、即ちその地の遊廓事務所に携わっていた人、位に絞られると思います。

私が注目したのは9の娼妓の出身地です。これは全国遊廓案内の多くの遊廓に記述にあり、それを、ほぼ同年代に調査し、このブログ(公娼と私娼その二)でも載せた内務省調査の『公娼私娼』の娼妓の出身府県の調査と突合せ、矛盾があれば、これは(イ)遊客が持った印象と言えるでしょう。

単数、複数にせよ(ロ)特定貸座敷が情報提供者でも、中規模以上の遊廓では全体を把握するのは無理で、矢張りその聞き取りをした遊廓主人の印象という事になると思います。

もし、整合性があれば、これを知りえる遊廓事務所に聞き取りをしたと考えました。

結果は、『公娼と私娼』に載るその府県の総ての娼妓の出身県、出身地と全国遊廓案内に載った娼妓の出身府県間のほぼ総てに整合性があり矛盾を見つけることは出来ませんでした。つまり全国遊廓案内の取材先は遊廓事務所だったと思います。(*同書で出身地方が記載された200ヶ所以上の遊廓のうち、滋賀県彦根遊廓、宮城県宮丸遊廓を含め二、三首を傾げる所も存在しますが、12/12加筆)

今回の考察はカストリ出版の主催者、渡辺豪さんが前回紹介した『全国遊廓の謎』を寄せて頂いたのがきっかけでした。

現在、私自身の各地の遊廓跡めぐりは中断しておりますが、再開の折には是非コンパクトで大変軽い軽いカストリ出版さんの『全国遊廓案内』を携えていくつもりです。遊廓跡巡りには外せない一冊です。

さて、いよいよ謎が深まる本書の発行者佐藤丘巣氏、公許とは云え、外地を含めた全国の遊廓案内書を出版するには今の私たちでは想像できない壁があったでしょう。もしこの佐藤丘巣がペンネームであり、洒落気のある人なら、佐藤窮す、ペンネームに自分の心境を閉じ込めたのかもしれません。






by gionchoubu | 2015-12-09 13:56 | 遊郭・花街あれこれ | Comments(0)