全国遊廓案内の作者は？

松江　和田見遊郭あたり

昭和六年『公娼と私娼』内務省警保局によれば、日本で一番娼妓数が多かったのは順に

一、大阪松島　　　３、６５７

二、大阪飛田　　　２，６４６

三、東京新𠮷原　　２，５５７

四、洲崎弁天町　　２，３２９

五、名古屋旭　　　１，５６２

六、京都七条新地　１，３４０

七、神戸福原　　　１、３２９

この全国七か所の遊郭が多く、次点が大阪南五花街の８０７なので、上記は昭和初期の日本の七大遊廓と言ってよいと思います。

この全国有数の娼妓数を誇る七条新地が『全国遊廓案内』から抜け落ちているのは大きな謎です。娼妓数が１０人程度の所が載るのに、此れだけ大きい所が省かれるのは、作者の恣意的な理由、としか思えません。

もうひとつ気になるのは、

昭和四年『全国花街巡り』松川二郎の松江の遊興制度で

すでに他の客へ出ている娼妓を自席へ招ぶには増花を附ける、一本三十銭で、幾本でも無制限につけることができる、これを「たいこ」と云う。然し先の客が之と同額の増花を拂うときは招くことが出来ない。又「赤札」と称して、最初から仕切って五割増の増花を拂っておけば、他の客から「たいこ」を発することのできない規定である。

『全国遊廓案内』日本遊覧社、佐藤丘巣

又、既に他の客へ出て居る娼妓を自席へ呼ぶには、一本三十銭の増花をつける。幾本でも無制限につける事が出来る。此れを「たいこ」と云って居る。然し先の客が自分と同額を出す時は呼ぶ事が出来ない。また最初から五割の増花を附けて置けば、他の客。から呼ばれる事が無い、此れを赤札と云って居る

非常に良く似た文章です。以前、松川二郎が『全国遊廓案内』の制作過程に関わっているのではないか、と書きましたが、これも一つの検討材料になるのではないか、と考えています。