港新地

『港区誌』によれば、港新地は昭和三年、安治川土地株式会社が土地発展策として、同社経営地の東田中町一、二丁目、西田中町一、二丁目一帯五千坪に指定をうけて建設されました。

戦前の最盛期には特殊料理店五十軒、芸妓数二百五十名を数えました。戦災後二十三年四月市岡パラダイス跡に復興しましたが、盛土工事のため再び二十九年に東田中町に移転しました。

市岡パラダイスは大正十四年、大劇場、映画館、演芸場、スケート場、野外劇場、飛行塔、農園、小鳥園、千人風呂、トルコ風呂まで備えた娯楽遊園地で、大阪の名所になりましたものの、昭和五年経営難で閉鎖されました。

『大阪春秋63』「わが郷愁の地図　―夕凪橋・港新地界隈」宇田正によると、著者は新地通りの中央南の西清元という料亭で、一階の椅子席の壁一面に新地の芸妓の名を書いた紙が張り出されていました。そして大きな和風の建物の検番も向かいの西側の路地は有りました。

昭和十年代に入って戦時景気で商売は繁盛したものの、昭和二十年の三月と六月」の空襲でその界隈は焦土と化しました。
戦前は芸者街でしたが、『朝日新聞』大坂本社版の昭和33年2月1
日に、売春防止法の完全実施を前に、港新地では大阪のトップを切って業者三十三軒の内十軒（従業婦が二十四人）が集団移転、残り二十三軒は転業予定とあります。

従業婦という表現から考えてみると、戦後は特飲街中心で復帰したのでしょう。港新地には夕凪新地の呼び名もありました。