京都パンパン赤線時代 十四

昭和23年10月20日の京都新聞に『若い女に売春』広告でつった悪貸席業者挙る、の記事が載ります。・・・少し文章は変えています。

十五日伏見警察署柴田刑事は、中書島の一古物商にて、若い女が衣服を売ろうとしているので事情を聞くと、女が言うに、苦しみから逃れるにはどうしてもお金が入用だとの事

この言葉に娘の寄寓先、伏見区中書島柳町特殊貸席業のSを調べた結果、昨年八月下旬、近畿の二、三の新聞に、座敷女中、月収一万円以上、衣装貸し、の募集を出したところ、割りの良い仕事と信じた加古川町のK子（17歳）にダンス芸者になれと勧誘

寝て客を取らすようなことはしないと安心させた上、市内大石橋方面で三味線の稽古に通わせひそかに久世郡宇治町の花屋敷に芸者として客席に出すように交渉

この事実を知って帰りたいというK子さんに、Sは小遣い名義で与えた二千五百円を返却しなければ返さない、というので自分の時計や着物を売ろうとしていた事が判明

又同広告を見て十月二日訪れた大阪市東区のTさん（22歳）に数回客を取らせTさんの花代約四千円の半額を着服した疑いが濃厚となったが、S夫婦は強要の事実を否定

しかし新聞に虚偽の広告をして若い婦人を偽り売春を誘った行為は勅令第九号違反であると、伏見署では、今後このような事のないよう関係方面に警告を発すると共に十八日、S夫婦を勅令第九号違反、いん行勧誘罪、児童福祉法違反で送検、新聞を利用する悪質業者に好条件に欺かれぬよう要望

中書島貸席組合長の談

昨夜も組合員を集めて十分注意したところです。私たちの組合では規約として新聞広告などを利用してしゃく婦を呼ぶことは絶対禁止していたのですが規約を破るものができて申しわけありません。これまでにも再三、再四警告を発していたのですが・・・しゃく婦も現在ここには戦前の三分一しかおらず困っておりますが今後十分自粛したいと思っています。

小山伏見署長談

虚構の広告で女を集め客をそらすなど非常に悪質で明らかに人権蹂躙であり、好条件にまどわされて女の一生をあやまるようなことのないように保護に万全を期するが、これを機会にしゃく婦として働いている婦人の動機などもよく調査したい。