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廓言葉の研究 その三

廓言葉の研究 その三_f0347663_12400772.jpg
                  飛田。よし百番さんの広間の大夫図

藤本箕山の『色道大鏡』は、日本の遊廓史に置ける旧約聖書のような存在だと思います。十八巻からなる完本の巻頭、名目抄は遊廓詞(さとことば)辞典であり、江戸時代中期以前、遊廓を中心に使われた言葉が並びます。この中には遊廓独自の言葉もあれば、当時一般にも使用されるが、遊廓に於いて独自の意味を持つものもありました。

その殆どが、現在全く使われていません。しかしながら、今も現代生活に深くしみこんでいる言葉もありますので、そのいくつかを紹介させていただきます。
(一部編集しております。)

【粋】(すい)当道の巧者をいふ。抜粋を上略したる詞なり。

【阿房】(あほう)戯(うつけ)たる人をさしていう。 阿呆とは、人のまもりめなり。うつけたる人は、何にても独りおこなう事なりがたきによりて、もりをつけねばならぬといふ心にて、鈍なる者を阿呆といき来れり。

【とろき人】戯たる者のいひかへなり。うつけ、たはけといひたるより、詞少ししゃれたり。

【突出】(つきだし)<禿の時代を経ず>其儘傾城に仕立出すを、突き出しといへり。・・・つまり最初に女郎として客をとること。

【肝煎】(きもいり)傾城屋の女子を抱るに、此肝煎といふ者、方々に子共を見立置て、告しらせ、口入する者をいふ。

【和気しり】粋といふまでの詞なり。当道の味を、よくわきまへたるといふ心なり。

【紋日】物日<毎月傾城の売日>の事なり。家々の紋のやうに定りたる事なるに依て、紋日といふ。

【つくす】うつけをつくすといふ上略の詞なり。

【もったい】潜上をさきだて、景気を繕うかたちなり。もったいらしきなどいふ詞なり。

【茶】茶を挽くともいふ。傾城の売れずして、宿にゐるをいふ也。平生さして用にたヽず隙なる者や、盲目などに、茶をひかする物が故に、しかいふ。

【鈍くさし】同じく鈍なると斗といへば詞(ことば)ふりたるゆへに、あたらしくいひそへたる也。くさしはあほうくさしといふにひとし。


藤本箕山が三十三年をかけて完成させた色道大鏡が世に出たのが延宝九年(1661)ですから、まだ花魁という言葉自体が存在しない時代です。生まれが京都の人だったからでしょうか、紋日、あほう、どんくさい、は今でも京都でよく使いますし、とろいは名古屋でよく耳にします。

つきだし、が遊里からでた言葉だと殆どの方はご存知無いと思います。私もこれを知ったのは、結構最近の事でした。

ただし、これを知ってから、居酒屋などで突き出しを出されると、「私なんかが最初の男でよろしいのでしょうか?」と、心の中で問いかけてから箸を付けるようになりました。


by gionchoubu | 2015-09-11 12:42 | 遊郭・花街あれこれ | Comments(0)