先斗町ぞめき 四

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高瀬舟と先斗町の舞妓さん

遊女渡世はご法度なれど、芸者は公許地以外でも黙認されていたらしく、
文化・文政の先斗町に、白木屋の小うの、玉八重のかな江という技芸、容色に秀でた芸妓、天保には京井筒屋、千草屋、大丸屋、仲屋の四軒の芸者扱い店があり、榎原八百、長谷川艶吉という評判芸妓、小林幸吉という義太夫芸者がいました。

このころ諸国の遊里を相撲の番付に例えた諸国遊所競という一枚摺があり、５００以上の遊所が記されています。全国の遊所の位とすると結構いいかげんな印象を受けますが、大阪の版元が出しているので、京都、大坂の順位だけ見ると相対的にかなり的を得てると思われ、これによれば、京都の遊所の順位は、島原、祇園町、祇園新地、宮川町、東石垣（南座の鴨川沿い）、五番町（千中西）そして先斗町、北野七軒（上七軒）と続き、そのすぐ後にも西石垣（先斗町の南筋）がみえます。

先斗町は中の上といったところでしょう。花代を載せた別の番付には先斗町金二朱、泊り一分とあります。

さて、このあと天保十三年(1842)所謂天保の改革で、京都の遊所は壊滅的な打撃を受け、先斗町も芸者稼業、水茶屋まで全て禁止され、十数軒の店が嶋原に移ったといいます。

その後、嘉永四年(1851)祇園、二条、上七軒、七条新地は公許地として復活すれど、先斗町の請願は又も却下、しかしながら、この公許の四箇所に劣らぬ繁盛を見せました。非合法ながらも丹吉という子方（置屋）におきの、おはるという名高き遊女、その他にも右近、紺縮緬のお玉という評判の妓がいたと伝えられています。

安政二年(1854)瑞泉寺に先斗町の業者が集められ、遊女を置く子方、これを迎える貸座敷は欠所と為し、百ヶ日間隔日改めの手錠という科料のお達しが有り、現に二軒ほどこの刑に服しました。

先斗町が待ちに待った正式なる遊廓の許可が下りたのは、それから六年後の安政六年(1859)六月廿十三日、明治維新はもうすぐそこ、先斗町の名がこの世に現れて１８０余年経ってのことでした。
そのステータスは嶋原の配下の二条新地の出稼地で、さらに期限付きというものですが、長年の思いが叶い、先斗町の業者は小躍りしたに違いありません。
ちなみに二条新地は川向こうの北、頂妙寺の北、ジャスコのある辺りで当時は京都四大遊廓の一つで、なぜか新先斗町という町が今でも正式町名として残ります。

この時の芸、娼妓扱店は近江屋、大文字屋、浜村屋、津国屋、浅井屋そして大黒屋の六軒で、大松屋という幇間の店もできました。